2012年5月12日土曜日

中国化する日本 日中「文明の衝突」一千年史

とても売れているそうだが、そりゃそうだ、面白いもん。久しぶりに知的好奇心のツボをあちこち押された感じ。これまでの漠然とした歴史観を「言われてみれば確かに!」という感じでひっくり返してくれる。

どうしても「中国化」と言われると、「なんでこの先進国である日本があんな遅れた国にならなければならないのか。没落するってこと??」みたいな反応になりがちだけど、そもそも論としてもともと中国は遅れてない、むしろ宋朝の時代に確立された「政治は独裁、でも経済は圧倒的な自由主義」という、今のグローバリズムを既に体現している国なのだ、という前提に立っている。日本も中世はそうした弱肉強食の世の中だったのだが、江戸時代にそれを放棄して平和になった。その後は明治維新、昭和の時代と、欧米列強に追いつけ追い越せでやってきたが、疲れてくると心のふるさとである江戸時代に戻りたがり、「多少貧しくても心が豊かな方がいい」みたいなことを言い出す、というのが著者の主張。

とにかく語り口が口語体でわかりやすく、しかも若い(32歳だそうです。)ため随所に2ch的言い回しが。私としてはすごく好感を持って読んだけど、嫌な人は嫌かも。2chに時々ある、専門板のまとめスレッドのものすごく完成度が高いのを読んだ感じ。

今、原発停止による電力不足が問題になるなか、特に高齢者から「そんなに経済効率ばかり求めてどうする。清貧の時代を思い出せ」みたいなことが言われるが、今の日本の快適で清潔な暮らしをしているからそう思うのであって、実際にリアルに貧しくなれるのか?という気がする。リアルに経済が崩壊するとはどういうことなのか、体感的にわかってないと思うのだ。(こちら参照。「経済が崩壊するっていうこと@ジンバブエ。」)だからこそ、「グローバリズムは悪、貧しくても心が豊かだった時代に云々」という言い方に違和感を感じるのだ。著者が言う「再江戸化」はもうごめんだ、と私は思う。

こちらに著者のインタビューが。あと、この人恐ろしく映画に詳しい。

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